インターネットバンキングが普及する中で、法人でもネット銀行を活用する企業が増えています。中でも人気の高い住信SBIネット銀行とGMOあおぞらネット銀行ですが、会計処理上、ある重要な違いがあります。
それは、預金利息の記帳のされ方です。銀行によって明細の表示形式が異なり、それにより仕訳処理のしやすさや実務負担が大きく変わってきます。
本記事では、税理士・経理担当者が知っておくべき、住信SBIとGMOあおぞらの違いをわかりやすく解説します。
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1. 法人が受け取る預金利息の税務上の取り扱い
まず前提として、法人が銀行預金から受け取る利息には、所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。
■源泉徴収税率(法人の場合)
区分 | 税率
—-|——
所得税 | 15.0%
復興特別所得税 | 0.315%
合計 | 15.315%
したがって、法人が利息を受け取ると、総額の15.315%が源泉税として差し引かれ、残りが実際に入金されるという仕組みです。
2. 利息の仕訳処理の基本
たとえば、100円の利息を受け取った場合、源泉税15.315円が控除され、実際の入金は84.685円になります(端数は四捨五入)。
このときの会計仕訳は以下のようになります:
(普通預金) 85円 (受取利息) 100円
(法人税等) 15円
受取利息は「総額」で記帳し、差し引かれた源泉税は「法人税等」などの科目で記帳するのが一般的です。
3. 住信SBIネット銀行:利息と源泉税が別々に明細表示
住信SBIネット銀行では、預金利息が発生したときに、利息と国税(源泉税)が別々に記帳される仕様です。
■実務上の特長
明細が分かれていれば、以下のように何も考えずにそのまま仕訳処理ができます:
(普通預金) 100円 (受取利息) 100円
(法人税等) 15円 (普通預金) 15円
明細=仕訳になるため、会計ソフト連携でも自動処理が可能です。経理実務において、非常に優秀な銀行です。
4. GMOあおぞらネット銀行:手取り利息のみが記帳される
一方、GMOあおぞらネット銀行では、預金利息が発生したとき、利息(手取り)のみが表示され、源泉税が含まれていないため、割り戻しが必要です。
■実務上の違い
手取り金額しか記帳されません。
明細表示の例:
日付 | 内容 | 金額
—-|——|——
4/1 | 受取利息 | +85円
■仕訳処理の課題
明細上には源泉税の金額が出てこないため、自分で逆算(割り戻し)する必要があります。
5. 割り戻し(逆算)のやり方
たとえば、GMOあおぞらネット銀行から「85円」の利息が入金されたとします。この85円は、総額から15.315%を引いた後の金額なので、次のように計算して総額を求めます。
■総額の求め方
総額 = 入金額 ÷ (1 – 0.15315)
85 ÷ 0.84685 ≒ 100.37円
ここから源泉税を求めます:
源泉税 = 総額 − 入金額 ≒ 100.37 − 85 = 15.37円
実務では1円単位で処理するため、四捨五入して次のような仕訳になります:
(普通預金) 85円 (受取利息) 100円
(法人税等) 15円
GMOあおぞらでは、手作業で割り戻して利息の総額と源泉税を求める手間が発生します。
6. 実務対応のまとめ:銀行ごとの仕様比較
銀行ごとの違いを比較します:
項目 | 住信SBIネット銀行 | GMOあおぞらネット銀行 |
---|---|---|
明細の形式 | 利息・源泉税が別記載 | 利息(手取り)のみ |
仕訳のしやすさ | ◎ そのまま転記OK | △ 割り戻しが必要 |
会計ソフト連携 | スムーズに連携可能 | 手作業・補正が必要 |
実務の負担 | 少ない | やや多い |
7. まとめ:銀行仕様を理解して経理処理の効率化を
預金利息は金額こそ小さく見えますが、仕訳や法人税申告書の別表との整合性にも関わる重要な科目です。
特に、ネット銀行をメイン口座として活用する法人では、銀行ごとの明細仕様を理解しておくことが、経理の正確性と効率化につながります。
最後に一言:
経理処理をシンプルにしたいなら、住信SBIネット銀行が断然おすすめ。すでにGMOあおぞらを使っている場合は、割り戻し用の計算表を用意しておくことが実務のカギです。
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