税理士試験に合格して実務経験を積んだ後は独立開業も視野に入れたいものです。
今回はバーチャルオフィスでの開業が可能かについて書いてみました。
結論として2024年3月時点ではバーチャルオフィスでの開業はできません。
まれに、ブログなどで、自宅において事務所登録を行い、自身のホームページ上で公開する住所をバーチャルオフィスにすることは可能と書いている記事を見ますが、どう考えても不可能です。
税理士がバーチャルオフィスで開業できない理由
これはバーチャルオフィスでの開業を法令が認めていないためです。
税理士事務所として登録できる住所は、自己所有又は賃貸借契約などにより自らの管理下とする場所である必要があり、バーチャルオフィスは住所貸事務所等の実態のないため事務所の設置ができません(鍵がかけられないコワーキングスペースでも事務所の設置はできません)。
一方でレンタルオフィスは小さくとも自らの管理下とする場所であることから税理士事務所として登録可能です。
以下税理士制度のQ&Aより抜粋
問5-2 税理士業務の「本拠」とは、どのようなものですか。
(答)
税理士業務の「本拠」とは、税理士等が自己所有又は賃貸借契約などにより自らの管理下とする場所のうち、税理士業務を執行するための場所として、外部に対する表示が行われた場所となります。【解説】
税理士業務の本拠について、税理士等が自らの管理下とする場所とし、外部に対する表示が行われた場所としているのは、行政庁・税理士会の指導、連絡及び監督の適切な実施や顧客の不測の損害を防止する観点から、法律関係を明確にする必要があるためです。
したがって、上記の趣旨から住所借りや実態のない事務所の登録を認めるものではありません。
また、自らの管理下であっても、外部に対する表示がなされていない場合は、本拠には該当しません。【参考法令等】
法第40条第1項
基通40-1
ちなみに公認会計士はバーチャルオフィスで開業することができるようです。
公認会計士の登録については公認会計士法17条で規定されていますが事務所の定義について言及はされていませんでした。
自宅において事務所登録を行い、自身のホームページ上で公開する住所をバーチャルオフィスにすることが問題となる理由
こちらも同じ結論ですが個人が二ヵ所事務所を設立することを法令が認めていないためです(なんでも法律関係の明確化が理由らしく、税理士法人は支店を出すことが可能です)。
自身のホームページ上で公開する住所がバーチャルオフィスのみであれば、住所は一ヵ所しか公開されていないため問題ないようにも思います。
しかし、事務所登録した住所は日本税理士会のホームページ上で公開されるため、そちらで登録されている住所と、自身のホームページ上で公開されている住所が異なってしまいます。
そのため、外部に対する表示として二ヵ所事務所に該当し、法令違反となる可能性が極めて高くなると考えられます。
以下税理士制度のQ&Aより抜粋
問5-3 外部に対する表示がなければ、二ヶ所事務所に該当しませんか。
(答)
本拠となる事務所以外の場所において、税理士や税理士事務所の使用人等が税理士の業務等を行っていたとしても、税理士事務所としての外部に対する表示がなければ、二ヶ所事務所には当たりません。【解説】
法第40条第3項は、「税理士は、税理士事務所を二以上設けてはならない。」と規定し、税理士1人につき1税理士事務所に限ることとして、2以上の事務所の設置を禁止しています。
「税理士事務所を二以上設けて」いる場合とは、例えば、自宅以外の場所に税理士事務所を設け、基通40-1の「外部に対する表示」をしている状態で、自宅においても基通40-1の「外部に対する表示」をして税理士業務を行っている場合などをいいます。
したがって、自宅等の税理士事務所以外の場所で税理士業務を行っていても、その場所についての外部に対する表示がない場合には、二ヶ所事務所には当たりません。
なお、「外部に対する表示」とは、看板等物理的な表示やウェブサイトへの連絡先の掲載のほか、契約書等への連絡先の記載などが含まれ(基通40-1)、本拠となる事務所以外の場所について税理士事務所と誤認されるおそれのある外部に対する表示をしている場合には、その場所は税理士事務所と判定され、二ヶ所事務所に該当することとなります。
例えば、「○○○税理士事務所□□□分室」、「○○○税理士事務所□□□オフィス」など税理士事務所と誤認されるおそれのある外部に対する表示がなされている場合は、税理士事務所と判定されることになります。【参考法令等】
法第40条第3項
基通40-1、40-2
まとめ
以上の理由から、税理士がバーチャルオフィスで開業することはできず、自宅において事務所登録を行い、自身のホームページ上で公開する住所をバーチャルオフィスにすることもできない可能性が極めて高いです。
ちなみに、税理士が事務所を2以上設置した場合には懲戒事由に該当するため、戒告、2年以内の税理士業務の停止又は税理士業務の禁止となります。
そのため、ご自身の顧問税理士が個人事務所であるなら、ホームページの住所がバーチャルオフィスであるかどうかは一度ご確認いただいてもよいかもしれません。
個人的にはここまでテレワークが一般的になった以上はバーチャルオフィスでの開業を認めてもいいような気もしますが…
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