監査法人と税理士法人どちらも経験すると税理士実務では当たり前だけれど、会計士はつまづくところがたくさんあります。
監査法人での業務経験しかない会計士が税務実務でつまづくところを挙げてみました。
これから独立される会計士、経理担当者、税務をやりたい会計士のご参考になれば幸いです。
予備校で学ぶ会計士試験知識や監査実務と税務実務のずれに焦点を当てています。
知っていることばかりかもしれませんが、租税法のテキストではそこまで細かくやらないため意外と面食らうこともあると思います。
今回は法人税申告書を見ていると別表5(1)でたまに見かける消費税差額についてです。
消費税差額の損金算入時期
消費税差額については、その課税期間を含む事業年度において益金の額又は損金の額に算入します(ちなみに税抜経理方式を適用している法人を前提としていますが、なぜ税抜経理方式であるかは後述します)。
つまり、仮受消費税と仮払消費税の差額である未払消費税または未収消費税と、消費税申告書で計算した納税額の差額(消費税差額)については一般的に決算修正仕訳により雑収入や雑損失として計上されることとなりますが、当該雑収入や雑損失は、その課税期間を含む事業年度において益金の額又は損金の額に算入することが認められており、消費税差額などという税務調整項目は通常発生しないということです。
じゃあなぜ別表5(1)になぜ出てくるのか?
私は当初、期中に計上した、仮受消費税と仮払消費税の差額である未払消費税または未収消費税と申告書の納付税額の差額が申告調整されているのだと思っていました。
しかし先ほどお伝えしたとおり、当該差額は決算修正仕訳により雑収入や雑損失として計上され、その事業年度に益金の額又は損金の額に算入することが認められているというのです。
???
認められているのに、なぜ別表5(1)に消費税差額が出てくるのか。
結論は消費税差額が決算時点ではわからないからです。
中小企業ではあまりお目にかからない
通常であれば決算締め作業と平行して税金計算を始めますが、そこそこの規模の会社では、税金計算の基礎となる決算数値を計算するまでに、支店単位や部門単位での数値を本社がとりまとめることとなります。
この、とりまとめに非常に時間がかかることから、そこそこの規模の会社では、税金計算を概算で行う実務が定着しているのです。
そのため、決算時点で概算で計算した納税額と申告時点で計算した納税額の差額が、本来であれば雑収入や雑損失として計上されるところ、決算を締めてしまったがために計上できず、別表5(1)に申告調整項目として出てくるのです。
先ほど、なぜ税抜経理方式を前提しているかは後述すると記載しましたが、別表5(1)にでてくる消費税差額は、決算修正仕訳を入力して会計を締めた後に、発生する差額であり、決算時点では税額がまだ変動する可能性がある、そこそこ規模の大きい企業で起りやすい事象であるためです(一般に税込経理よりも税抜経理のほうが、納税者有利とされており、一定規模以上の会社であればほぼ確実に税抜経理が採用されています)。
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